景気は上向いていると経営指標が示すものの国内のほとんどの企業がその実感をつかめていないのではないでしょうか。
特に雇用問題が暗い影を落とし、どの地方都市に行っても活気が失われているように見えます。
人を軽んじる企業が多い中、社員の暮らしを守ることに経営の軸足を置く旅館があります。
その旅館はプロが選ぶホテル・旅館として30年間連続日本一に輝いた「加賀屋」です。
【本日の紹介図書】
『加賀屋のこころ』
細井勝 1,680円(PHP研究所 2010.2.22)
人を育て、人を大切にした経営が、能登半島地震直後にどう活かされたかは今日のメルマガでお伝えしました。
加賀屋の被害は甚大で、営業再開までの1ヶ月、キャンセル客を2万5千人も出してしまいました。
合わせて復旧工事等にかかる費用は20億円。
旅館業は毎日入ってくる宿泊料のほか収入はありません。
その収入が途絶えたまま200人もの客室係を1ヶ月抱えることは相当につらいものがあります。
当時の人事部長、高柳洋一さんは、労組が強い全国でも大手の建材メーカーで団体交渉の矢面に立つ工場長を長く務めた人です。
工場を定年になった後、加賀屋に入社した労働管理のエキスパートです。
その高柳さんでさえ「一時解雇」の結論が出せず、二つの案を会長に示します。
「一時解雇」か「人員確保」か。
一般的に、客室係は季節労働とみられ、旅館から旅館を渡り歩くことも珍しくありません。人手不足を接客の素人であるアルバイトで補おうものなら「あんな、いい加減な旅館は二度と行きたくない」ということになります。
そのようななか、加賀屋が日本一であり続けたのは「もてなし部門」で常にトップであったからです。
その加賀屋でさえ客室係の年間離職率は4人から5人に1人という高い割合を示しています。
特に若い人が「自分の時間を持てない」「忙しすぎる」といって辞めていきます。
誰もが「人と接する仕事で心を豊かにしたい」と思って入社してきますが、満館のときは1日中神経を張り詰め立ち回らなければならず、それに持ちこたえられない人が辞めていくのです。
高柳さんから相談を受けて30分後、小田会長は全社員の前に立ちます。
社員達は小田会長から出てくる言葉を固唾をのんで待ちます。
「すべての社員を守り抜く」
その瞬間、女性、男性を問わず嗚咽が漏れてきました。
加賀屋は社員を休業に追い込む雇用調整助成金の申請も出しませんでした。
残されたのは加賀屋がこの危機を乗り越えるかどうかの体力勝負のみでした。
加賀屋が創業以来の大きな危機をどう乗り越えることができたかを知りたい方は本書を手にとり確認されることをお薦めします。

はてなに追加
MyYahoo!に追加
livedoorClipに追加
Googleに追加




ここまで牽引されると、知りたい欲求に負けてしまいます。
Amazon行きます。
ちょっと用があって、丁度加賀屋について調べていた矢先の内容だったので驚いています。
社員を使い捨て商品のように扱うトップが多い中、この決断はすごいですね。しかも30分で出したのですから。
こういうトップになりたいものです。
masa55さん
それが狙いですから(笑)ぜひ、加賀屋のこころを知ってくださいね。
くーじゃんさん
能登の加賀屋にはいつかはぜひ行ってみたいと思っています。昨年家族で旅行したときは日程がきつくて能登でなく箱根の加賀屋にしていしまいました。やっぱり能登にすべきだったと少々悔やんだりなんかしています。もし、行かれるのであれば感想聞かせてくださいね。
加賀屋は私も十年以上前に宿泊したことがありますが、浴衣が一人一人の体形に合うように出されたり、食事も宴会料理の冷めたものではなく温かいものが出たり、すべてに行き届いたサービスだったと記憶しています。
その背景には、この社長のような社員を大切にする姿勢があったことが分かりました。
しかし、メルマガ、ブログのここまでの展開で、masa55さんがおっしゃるように、立て直しがどう行われたのか、1クリックせざるをえません。
マーさん
中国の旅行会社を案内したときに小京都と呼ばれる観光地の食事会場で冷え切ったお膳を出され受けが悪かったことがあります。たくさんの観光客が次から次に入れ替わるので難しいのかもしれませんが、特に中国の方は暖かいもの好むのでがっかりさせてしまいました。味が良ければいいというものではないんですよね。立て直しについてですが、経営面というより人の心に焦点を当てた内容となっているので、資金繰りをどうしたかとういようなことを期待されると物足りないかもしれません。
「すべての社員を守り抜く」
・・・・
きっと涙が出るでしょう。
現実はそっと横に置いて、そう言われたと妄想して頑張ってみよう。
それにしても その続きは? 欲しい本が目白押しです!
すずボスさん
一度は言われてみたい、言ってみたい言葉ですね。ここ2週間は「経営」を扱ってきたので、来週からは個人のスキルアップを特集したいと思います。さて、週末は書店に行って皆さんが欲しくなる本を探さなくては。
初めてコメントします。
加賀屋には2度ほど泊まったことがありますが、ここ10年以上行っていません。それにしても、30年連続して日本一の旅館であり続けるというのは本当に並大抵のことではないですね。
危機管理について、会社として強化しようとしているところであり、この加賀屋の危機対応を社員全員に紹介したいと思います。
人間大事の経営とは、従業員に優しいという意味ではなく、従業員に自覚、責任感を生み出せさせて初めて実現できるということがよくわかります。
デッセさん
メッセージありがとうございます。
加賀屋が日本一であり続けるのは施設でもない、料理でもない、そこで働く「人」だと著者は語っていました。あれほどの大旅館でありながら残してきた家族のことを心配して帰った社員が1人もいなかったというのがすごいと思います。年2回の訓練もなかなかできないことですが、お客様を助けたいという気持ちが先にあったからこそ全員が一丸となってそれぞれの役割を果たせたのだと思います。
加賀屋さんの復活過程を感読しました。
読後の感想だと、やはりそうかと思えてしまう程、強い説得力を感じてしまいました。
現実に企業のマネジメントを担う立場から言わせて頂くと、手法の選択肢として頭の引出しに入れてはいるが、小説やTVドラマの筋書きの様で、実際のその時に実行出来るかは大変疑問です。培ってきた風土なのか、歴代の経営手腕なのか、それに共感する客を含めた関係者達なのか、おそらく全てがシナジーを生む流れを創り続けているからでしょうね。
実際にやりきってしまった事例として、会長、女将さん達のリーダーシップと決断力、覚悟を持った潔さ、進化し続ける加賀屋イズムを見習いたいと思っています。
まさに教科書になる一冊になりました。
kouguy殿、良書の紹介有難う御座いました。
masa55さん
頭ではわかっても実際同じような立場に置かれたときに加賀屋の会長さんや女将さんのようなリーダーシップ、判断力、行動力がとれるかとなるとmasaさんがおっしゃるとおり大いに疑問です。日本一として選ばれ続けることへの誇り、高揚感、顧客や関係者、日本中のファンから期待されていることに答えなければいけないという使命感、そして何よりも加賀屋の歴史のなかで培われた社風、チームワーク、それらの総合力であると思います。東アジア、新興国などに押される日本が生き残る道を教えてくれているのではないでしょうか。